星の寿命
『星の寿命』 by 超能力内科医
ある日、ボクはマイノリティの塊になって、マジョリティ星から飛び出そうとした
マジョリティという名の星は、常識、安定という引力をもっていて
飛び出すマイノリティを許さない
勢いのあるものはスティグマと言う雷で撃ち落とす
それでも負けないマイノリティの塊は
時として引力に打ち勝ち
スティグマを跳ね除け
惑星に成長する
惑星になれば、引力に抗う力を持つ
美しく、濁りのない世界
ボクはホッとため息をつく
ある日、マジョリティ星から来たのは使者だった
互いを尊重し、立場を決めた
惑星は徐々に色が変わり、黒く、光を吸収し始めた
常識と安定の引力が生じ、新たなスティグマが生まれ
気がつけばボクはマジョリティ星と呼ばれていた
ある日、やっぱりボクはマジョリティ星から飛び出すことにした
力強くジャンプしたけれど、こんどはスティグマに撃たれた
操縦不能になったボクの体は隕石になってマジョリティ星に墜落
少しだけ騒がしい衝撃音はすぐに飲み込まれたけれど
ボクは星と融合していきながら輝いて、惑星の常識やあり方に歪みを与え
マジョリティ星は色鮮やかに波打った
仰向けで、波打つ地面に飲み込まれながら
ボクに憧れたマイノリティが、大気圏めがけて燃えていくのを眺めていた
それから何億年もかけて、ボクはなんどもマジョリティになって、マイノリティになった
マイノリティになってはマジョリティになった
あるとき飛び出したら、久しぶりにスティグマに撃たれた
叩きつけられた地面は、はじめてボクを弾く
大地はもはや融合する力を失ってしまっていた
黒く沈みゆくマジョリティと共に、ボクは旅の終わりを知った