「たりない僕」はインドの大学に入学し「豚」を求めた
はじめまして僕はインディラ、日本人男子
僕は19歳の時インドのバラナシにある大学に入学した
バラナシという街はヒンドゥー教の聖地で「肉」とか「酒」がなかなか手に入らない
ヒンドゥ教徒が牛を食べないことは有名だけど、基本的に豚・羊の肉食も好まない
最初は「おぉー!本場のカレーだ!」って喜んでた僕だったけれど
次第に野菜やスパイス料理ばっかの生活に飽きてきた
とにかく肉を食べたい
19歳の健康な日本人である僕は、聖地にいるけど聖人じゃない
強制的にベジタブル修行を課され
何かの禁断症状のように肉を求めていた
そんなとき大学の同級生と「ベーコン」を入手しようという話になった
彼もまた病的に肉に飢えていた
彼は自分で言った「ハンバグ・・・」という寝言で「え?今、ハンバーグ?あれ?」と飛び起きるほど追い込まれていた。
健康であればあるほど、それは紙一重病気なのかも知れない
とにかくベーコンを探した
19歳と20歳の青年達が豚肉を求めインドを彷徨う物語
そこにはラブロマンスはない。グレートギャッツビーのような華やかさも皆無
あるのは野良犬、野良牛、野良詐欺師、カレーの香り
そして熱したフライパンで炒められているが如き灼熱
今宵僕たちはチャーハンの具になる夢をみる
ボリウッドよ映画化を待っている
なんにしても。探しても探しても全然ない
向かいのモスク、カレー屋の窓
そんなところにあるはずもないのに♪
な い !
なんというか半径100km以内にある気がしない
同級生君と話し合い「首都に行こう。首都ならベーコンが食えるはずだ」
なんだろう? 実に若者らしい、頭の腐りきった結論に至る
これはインドの暑さのせいなのか
健康な中学生男子はエロのために県境を越える
エロ本がよく落ちている河川敷があると聞けば、平然とチャリを30kmは走らせる
現代の若者は可哀想だと思う
自身の内部にあるエロのエネルギーが、予想もつかない大冒険を連れてきてくれるのに
ふんふん、はいはい、ピッピッピでエロが手に入るんだもんね
スマートエロはダメだよ。達成感も徒労感もない
何でも簡単に手に入るなんて、すごく可哀想
年を取って、知っちゃったらあのエネルギーは出てこないから
あれは、あのときの旬なんだと思う
足りないって、大事なんだと思うな
そして、あのとき、僕たちに豚が足りなかった
豚を求め夜行電車に15時間揺られた
乗車率は500%ぐらい、欲求と相まってコンビーフになったような気分になった
辿り着いたニューデリー
集まる詐欺インド人をかわしながらたどり着くイタリアン
飲み慣れてない赤ワインを真昼間から飲みながら、大きな声で「カルボナーラ2つ!」
クリームソースに絡められたパスタの間にベーコン達
その感動は河川敷で見つけたエロ本と同じ
ありがとう豚さん!
一体どこかららやってきた「ベーコン」かは分からない
だけどそんなことは知ったことか!
ありがとう、ありがとう。止まらないありがとう
往復30時間もかけてベーコンを求めたあの日
あの情熱で今の自分を磨けたらなぁ