モテモテおじさんが 『大事にしていること』
by 太平
多様性について考えていると、どうしても思い出してしまう。
今日は僕のおじさんの話。実母の弟にあたる。イケメンでトークも切れるので、若い頃はそれはそれはモテたらしい。
そんな彼が、今から20年前、僕を呼び出した。そして真剣なトーンで語りはじめた。当時僕は高校生だった。
「お前はろくでなしだ。お前の母親の血を引いているから、絶対にろくでなしだ」
他所の子を呼び出しておいて、開口一発目からコレ。
「You must be ロクデナシ」
さらにその理由が母親の血脈にあると宣う。
顔を合わせてから、血縁をディスるまでわずか『5秒』
出会って5秒で悪口
しかも僕には操作しようがない『生まれ』を誹る
まさに差別の鬼。実にシビれるおじさんである。
「おじさんだって僕の母親と血を分けた兄弟じゃないか」
「そうだ、だからおじさんもロクデナシだ。自分がそうであるからこそ、お前のことがよく分かる。いいか、確実にお前はろくなことをしない。
なんてったってあの母親の息子だ
そのロクでも無さは主に異性関係において発揮される」
僕の母親は異性関係において、いったいどんな迷惑をかけてきたのだろうか?
「お前の母親は、よく若い男を家に連れてきていた。いつ、どこで知り合ったか聞くと、さっきとか、今日とか、海とか片言で答えた」
上記の文章は対象を魚類に変えると、非常に話は明確になって分かりやすい。
※「お前の母親は、よく活きのいいサザエとか持ってきた。いつ、どこで獲ったのか聞くと、さっきとか、今日とか、海とか片言で答えた」
→なるほど、そうか。僕の母親は海女だったのか!?
冗談はさておき想像して貰いたい。
親類のおじさんから
お前の母親はビッチだぞ。ロクデナシだぞ?
と突きつけられる気分を。
なかなかシビれる、これ以上の刺激を求めるなら、もうイケナイ薬をやるか、インドに行くくらいしか選択肢がない。
閑話休題、おじさんの話に戻す
おじさんは言う
「いいか?今日はお前に男として大事な話をする。心して聞け」
「お前はロクデナシだから、多分、異性を困らせる」
「一番、異性を困らせるのは別れ際だ」
「いっとき、好きになって、その瞬間は本気になった女の子でも。やっぱり合わないなって思ったり、冷めたりすることがある」
「相手も同じタイミングで冷めてくれたらそれは良い」
「自分が好きでも、相手から嫌われてしまった、それは歯を食いしばれば良い」
「だけど、そうじゃないことがあるだろう?」
「お前は冷めたけど、相手はホカホカ、そんなときのことだ」
「ひどく傷つけるような振り方をしたら、もしかしたら自ら命を断ってしまうかもしれない」
「男の子は、1回でも好きになった人をそんな傷つけ方をしちゃいけない」
「別れ際、きちんと相手に嫌われるようにする、それが強い男の子」
「それでは今日は、正しい女の子からの嫌われ方を伝授する、よいな?」
はい、と僕は小気味よく答えた。と思う。
「うむ、ではまず、彼女の家に行く」
「そしてトイレを借りる」
「うんこをする」
「流さずに帰る、これがファーストステップ、基礎工事だ」
!
「お前が気に入るような女の子だ、一回目は必ず流してくれる。文字通り水に流してくれる。お前に何も問わないだろう、そんなこともあるよねって思ってくれる」
「すかさず、一週間以内にもう一度彼女の家にいけ」
「そしてウンコをして、また流さずに帰れ」
!?
「そう、きっと彼女はまた流してくれる」
「でもな、もう彼女の中では軽いパニックが始まっている」
「この人はウンコを流さない人なんだ」
「ウンコ流したことがない人なんだ」
「そういう民族なんだ。クソ族なんだ」
「そんな風に、お前のことを考える度にウンコのことが頭によぎる」
「お前に対する顕在意識も潜在意識も無意識も、ぜんぶウンコまみれになる」
!!!?
「そして仕上げだ。一週間以内にまた家にいき、ウンコを流すな」
「これでセット完了、一ヶ月以内に必ずお別れを告げられる」
「いいかい?嫌われないようにしようとか、良い関係で終わろうとか、そういうのはぬるくて弱い男のやることだ」
「おじさんのこの方法は、おじさんしか傷つかない」
「本当にかっこいい男ってのは、ただ自分だけが傷つき、それを乗り越えて笑う男だ」
「キレイに終わりたいなんて、自分が傷つきたくないだけだろう?」
「強い男は、しっかり踏ん張りウンコを残せ」
僕はオジサンのこの話が、なんかよく分からんけど、すごい刺さった。
高校時代の僕は、この話を『レッツクソ野郎』として、顕在意識、潜在意識、無意識に刷り込みまくった。
色んなところに発明家はいるものである
そして、おじさんは20歳歳下のどえらい美人と結婚した
良かったねオジサン。この人にはウンコ見せてないんだよね?
「馬鹿野郎。この人は3回残しても、本当に水に流してくれたんだ。だから結婚してくれるまで土下座よ」
かなわないなぁオジサン