ドーラへの復讐:クソガキの眼は殴られても年をとらない
感じの悪い老婆が駄菓子屋を経営していた
第1話:世界一感じの悪い駄菓子屋さん
第2話:駄菓子屋での『狂ったお作法』
彼女のあだ名はドーラ
実を言えばこのあだ名、最近付けたものである。思い返すと天空城ラピュタに出てくるドーラに雰囲気が似ているからだ
40秒での支度を強いる彼女を『100倍感じ悪くした老婆』
そんな人物をイメージしてもらうと、かなり近い
ちなみに当時はここには書けないような酷いあだ名がつけられていた。
そういうものなのだ
子供は可愛いが、若干の邪気と供に残酷なのである
僕たちはドーラ駄菓子店で『泥棒』を疑われながら買いものをし
野太い声で『ポケットに手を入れるな』と命令され続けながら育った
友人の山下君などは、店内でベビースターラーメンをぶちまけた罪で
ドーラに追いかけ回されたあげく、ホウキのボーボーしてる方で顔を突かれまくった
子ども達は復讐を誓っていた
ポケットに手を入れただけで罪人扱いされた怒りをフツフツと育てながら
彼らは心と体を鍛えた
時は小学5年生。第二次反抗期まっさかり
母親と父親と、学校の先生と、世のあらゆる権力に『屁理屈』をこきまくりながら、怒られまくりながら『言い返す力』を鍛える
『ガキのくせにと頬を打たれ、少年の眼が年をとる』
これは中島みゆき様の超有名歌謡『ファイト』の一節であるが
本物のガキは年をとらない。ぶたれる度に若返る、不死鳥のように、麦のように
僕は同級生の中川君と供に、ドーラ店に乗り込んだ
まず僕がドーラの目の前でポケットに手を入れる
『ポケットから手をだしぇ』
僕がポケットから手を出す、おもむろに中川君がポケットに手を入れる
『ポケットから手をだしぇ』
この辺まではドーラも冷静だった。淡々としていた、古いマンションの管理人のように事務的だった。留守番電話の録音テープのように無感情だった。
そして中川君がポケットから手を出す as soon as 僕がポケットに手を入れる
『ポケットから手をだしぇ!!!』
僕がポケットから手を出す すかさず 中川君がポケットに手を入れる
リズムとテンポが産声をあげる
『手をだしぇ!!!!!!!』
中川君がポケットから手を出す 同時に 僕がポケットに手を入れる
まるで餅つきのように、リズミカルに、調和して
『だしぇ!!!!!!!!!!!!!』
老婆も同じことを『くり返すとき』は徐々に省略を行うことを知った
錆びついた大脳新皮質に、子供達が射したイタズラというオイル
ドーラの知性は若かりし時代のしなやかさを取り戻していく
僕がポケットから手を出す 『するや否や』 中川君がポケットに手を入れるとみせかけて
フェイント
『だしぇっていっとるやろがぁあぁあぁあああ!!!』
中川君・僕『はーい、入れてませんよー。先生!良く見て下さい!』
『○□!#&%@<>$#㌍!!!!!!!!』
バーン、どーん、ガラララガシャン
↑ドーラが何か呪文を唱えながら机をバーン、机の上に乗ってたガムの棚が地面にドーン、ガムガラララガシャン
『でていけぇえええええぇええぇ!!!!』
追い出される
このドーラに一矢報いた事件を、たまたま店内にいた下級生が広め
僕たちは一躍ヒーローになった
そして噂話にはよく分からない尾ひれがつく
最大まで広がった時点の噂話は
僕と中川君と谷口君の3人が店内に乗り込み
3人がランダムにポケットに手を入れたり出したりを繰り返す
ドーラは、モグラ叩き的に『だしぇ!』『だしぇ!』右に、左に大忙し
やがて眼を回して倒れた
その時に棚が倒れてガムが散らばる
散らばったガムは、きっちり棚に戻し、チロルチョコを1人1つずつ取ると
きっちり30円を机に置いて颯爽と店をあとにした
眼をまわして倒れる寸前に、ドーラは足が臭くなる呪いの呪文を3人にかけたが
天神様の神社でお祈りすることで浄化され、3人は無事に帰宅した
というものだった
たぶん尾ひれをつけた犯人は『谷口君』
羨ましかったのだと思う、自分を登場させることで、一緒に冒険した気分になりたかったのだろう。その後、彼は京都大学に進学し歴史を専攻する。古代の歴史の味わい方・愉しみ方を、齢11にして教えてくれた偉大な人物である。
続く